寅さんも来ました

「ごめん寝てたかな?」

ええ、寝てましたとも。今起きましたけどね

見ての通り、今日は私がやってきたと、藤さんに続いて今度は未来の寅さんが、私に告げた

いや、呼んではいないんですけどね。という言葉はどうにか飲み込んだ

今日はどういう趣で、お越しになられたんですか?と、すこし冷たい口調になってしまったことを

言った側から悔やんだ

寅さんは顔を掻いて、やれやれとポーズをとり、少し暖かいものでも飲まないかとキッチンにトコトコ移動した

熱いの飲めないですよね?と、尋ねると曖昧に首を振り、続く言葉を待ったけど特に説明はなかった

「キミには友達がいない」

面と向かって言わないで頂きたい。死にたくなる

でも、強がりのように聞こえるけど、それが寂しいとか不便だとか感じたことはないと伝えると、ふむふむと相槌をしながら、慈愛の目を向けて、こう告げてくれた

「いらないでしょ」

え、そうなの?

友人の定義ってどこからどこまでよ?ってそもそも考える人は友人なんていない

友人がいると自信を持って答えられる人は、そんなの気にしていないよ

もしかするとキミも人によっては相手から友達と思われているかもしれない

と、入れ立てのココアをやっぱり熱そうに口につけて寅さんは言った

誰かが定義付けた状態が友人であれば、キミが考えて友人がいないと考えることと、友人ではないと思う人の差があると思うかい?

だいたい、友人がいたとしてキミは友人となにがしたい?

もちろん、時間を共有するのに、相手がいた方がと思える時があるかもしれない

それは価値観があうという認識の上に成り立つものだ

もしくは価値観をどちらかに合わせているかのどちらかだ

ただ、友人と呼ばれる人にとってキミといることがメリットがあるから、友人と認識されている訳で、それはキミが相手に求めているものも一緒

当然デメリットがメリットを上回れば、友人という状態は解除される

契約を結ぶ関係ではないから、互いの主観でしか成り立たないんだよ

必要なのは、RPGのように目的達成のために一緒に戦うパーティーメンバー(仲間)であって、友人達で冒険始めましたでは魔王は倒せない

ふむふむと頷き、そういえば我々の関係はいったいどういった仲なのか聞いてみた

寅さんは僅かに口角をあげただけだった

やはり泣きたくなった

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